沿革
2018年6月7日ISPACOSのSNSグループを開設しました。発足時の挨拶文を紹介します。
最近のがん研究はめざましいものがありますが、その一番の問題は、腫瘍の縮小効果や生存率など、抗腫瘍効果を主要評価項目とした臨床試験ばかりが目につくことでありましょう。有害事象の評価は二の次であり、いわんや副作用対策をや…であります。抗腫瘍効果の高い治療法開発はもちろん大切ですが、そろそろ患者さん目線に立った、有害事象で苦しむことのない治療開発、有害事象の対策も明らかにしてから薬剤を世の中に送り出す姿勢が期待されます。産んでしまえばそれで終わりという常識を覆すべく、Patient-centeredで、Science basedな副作用対策を提案できるOncologyをめざしませんか? そして、日本から発信しますが、敢えてJapaneseとせず、Internationalをめざしませんか? 小さく生み、大きく育てるために、Scientist入村達郎先生、Physician齊藤、Patient reporting systemとAcademic detailingで患者と医療者の橋渡しをする研究の国内でのパイオニアである小茂田昌代・尾関理恵先生チーム、そしてPatientがコアとなることを提案します!
入村先生からは、規制当局PMDAの佐藤淳子先生と永島里美さん、齊藤からは大学で基礎研究をされている江口英孝先生と日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT for Cancer)の野中希さん、薬剤師で大学院生の齊藤有希さんに声掛けをさせていただき、初期メンバーとして、月に一回の運営委員会が始まりました。2日後の6月9日には、以下の内容を含んだ依頼状を送った履歴がありました。~ISPACOS(E)設立に向けての活動開始~International Society;日本で立ち上げる集会は、ほとんどが日本…学会ですが、これでは発展性が乏しいものになります。Patient-centered;患者中心と唱ってはいるものの、がん治療の開発は、中心は癌組織です。患者さんの苦痛(副作用や原疾患の症状)対策は二の次です。Oncology Science;これまでの支持療法(治療中の苦痛に対処する治療法)の臨床試験は、海外のものも含め、基礎研究に繋がるものがきわめて少なかった。Education;国際性、新規性、サステイナビリティー追求のために医療者は若手から引きこみ、患者、家族、多職種医療者、研究者、市民、企業に、啓発と教育と参加呼びかけを行い、企業の開発目標をレギュレーションから変える。その結果として、支持療法にも企業の財源が投入されるようにすることをめざし、市民、患者、家族にもこれを諦めない意識を定着させることをめざします。
かように発足し、「第1回シンポジウム」を2018年12月に順天堂大学会議室で、約80名を集めて開催し、「第2回シンポジウム」は2019年6月に「第1回シンポジウム」の倍以上の参加者とともに開催、「第3回シンポジウム」は2019年12月に日本とほぼ同じ規模で結成されたバンコク支部主催で、日本から4名が参加して行われ、「第4回シンポジウム」は2020年6月、コロナ禍で日本主導でのWEB開催、参加者は200名に上りました。「第5回シンポジウム」は2020年11月バンコクからのWEB開催とし、通訳・翻訳を駆使して、世界共通のCOVID-19やCancerとの闘いや共存をどのように考えたらよいのかを討論しました。この間、遺伝性乳癌卵巣癌症候群の処方時プライバシー保護強化を薬剤師の職能団体に向けて依頼するなど、シンポジウムであげられた課題を解決することにも尽力しています。当初10名足らずでありましたが、運営メンバーは多様性を増した30名ほどに膨らみ、今後の活動を毎月熱心に議論しています。
ISPACOS 設立にあたって
永年,がん患者さんの臨床及び治療中の就労支援や治療後の長期 follow upに従事して参りました。抗癌剤、ホルモン療法剤に加えて、分子標的薬が登場したことで、がんのみを標的にした、有害事象の少ない抗がん治療が実現できる予感で、患者のみならず医療者の期待は膨らんでおります。そして、期待通りの効果を上げているものが続々と手に届く現実があります。しかしながら、分子標的薬の中には、これまで経験したことのない、個別性の高い副作用に遭遇することがあります。これらの副作用への対処は,休薬や減量、もしくは対症療法であり、重篤な有害事象は、病勢の悪化もあいまって、 臨床の現場ではタイムリーに深く追及することができない歯がゆさがあります。誰に何が起こるのか予測すること、どうして起こるのかメカニズムを解明することは、既に地道に様々に研究が進められているところだと思いますが、臨床と研究現場の間には距離があることを否めません。
また、医療者にとって、患者の客観的指標が無い症状を漏れなく正確に把握することが容易ではない現状があります。医療者が時間的制約の中で取り入れる情報の取捨選択している実情があります。患者側も自分の身体に起こっていることを医療者に伝えるということに関して、現場の忙しさ、症状の重要性を自身の判断で伝達の取捨選択をして いる実態があります。最近 PRO(patient reporting outcome) 整備が急速に進められようとしている所以です。患者の訴えを正確に引き出し言語化し,医師が客観的データとともに薬剤師,看護師などの医療者はもちろん,創薬に関わる製薬会社やアカデミアの研究者,PMDAや厚労省など医療行政とも情報共有を図ることは、安全で有効な治療実施と対象選択が行える社会に向かうために、とても重要なことと考えます。これまで症状対策(支持療法)は、現時点で治療の奏功の次に位置する付随的なエンドポイントとなっていました。しかしながら、支持療法は、医療のエンドユーザーである患者に対して当然行わなければならないサービスであると考えます。治療が奏功することと同時に有害事象に対処できるよう、休薬・減量・対症療法以上の治療や、有害事象の予測マーカー開発に、既に存在する科学の力を導入する必要性を認識し、各領域の専門家が一堂に会し、情報の共有から課題に向けての協働を目指せる研究会の設立に至りました。
研究会の名称を「International Society of Patient-Centered Oncology Science; ISPACOS」としました。International と銘打ったのは,ここ東京・御茶ノ水からの小さな発信かもしれませんが,このことは世界共通の大切なテーマであり,やがては国際的なムーブメントにしたい,という想いからです。志を同じくする,医療に関わる方だけでなく,さまざまな分野で活躍されている方々のご参加を望みます。
ISPACOS 代表 齊藤光江
組織図
運営委員会
初期コアメンバー : 日本国内(五十音順)
入村達郎 順天堂大学大学院医学研究科糖鎖創薬研究室(特任教授)
江口英孝 順天堂大学大学院医学研究科難病性疾患診断・治療(准教授)
尾関理恵 順天堂大学医学部 乳腺腫瘍学講座(助教・薬剤師)
小茂田昌代 医療法人沖縄徳洲会 千葉西総合病院薬剤科(顧問)、東京理科大学薬学部(嘱託教授)
後藤博史 後藤編集事務所
齊藤有希 順天堂大学附属順天堂医院薬剤部(薬剤師)乳腺腫瘍学(大学院生)
齊藤光江 順天堂大学医学部 乳腺腫瘍学講座(教授・医師)
永島里美 東京大学医学部付属病院企画情報運営部(薬剤師)
拡大コアメンバー:日本国内(五十音順)
青木 伸 東京理科大学薬学部(教授)東京理科大学総合研究院(副院長)
遠藤源樹 順天堂大学医学研究科公衆衛生学講座(准教授)
高 幸子 順天堂医院看護部 乳腺センター(看護師)
高橋香織 IL Pharma Packaging
鳥井大吾 一般社団法人キャンサー・ベネフィッツ (代表理事・肉腫体験者)
松田七美 順天堂大学研究戦略推進センター(科学者・URA)、早稲田大学グローバル科学知融合研究所(客員准教授)
宮地紀彰 アクトメッド株式会社
目々澤肇 目々澤醫院(院長・医師)
武藤 剛 北里大学医学部衛生学/千葉大学予防医学センター(講師・医師)
各国の運営委員(五十音順)
[タイ]岩本公子 タイ商工会議所(保健衛生委員会)
岩本公志 東海ハイジーンタイランド(営業企画部)
大西由香 グラフィックデザイナー
志井正行 NIPPON SANGYO (THAILAND) CO.,LTD. (Managing Director)
則竹 淳 Bangkok Hospital(Medical Coordinator)
早矢仕真史 MATSUNAGA (THAILAND) CO., LTD. (Managing Director )
[カンボジア]
岡和田学 サンライズジャパン病院(病院長・医師)
[ASEAN]
三坂尚子 Economic Research Institute for ASEAN and East Asia Healthcare Service(Manager)